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女敵「さっさとアタシなんか倒しちゃえばいいのに」 

カテゴリ:男女SS

1以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/27(火) 00:17:05.65 ID:xGeGXXgU0
全ては、中古屋で買ったゲームから始まった── 


一度クリアしたらすぐ忘れそうなほど、ありきたりなタイトルのマイナーRPG。 

値段は驚きの100円。 

私は風呂上がり、さっそくプレイしてみた。 


男「うわっ、オープニングからしてクソゲー臭……」 

男「100円でも高いかも」 

男「なんか無理ありすぎないか? このストーリー」 


けなして、けなして、けなしまくる。 

まるで日頃のストレスをぶつけるかのように。 


2以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/27(火) 00:17:51.84 ID:xGeGXXgU0
ゲームはなかなかはかどらない。 

あることないことゲームのせいにしつつ、右往左往する。 


男「あぁ~くそ、やられた……。一人旅RPGは俺にはキツイわ」 

男「敵強すぎだろ~」 

男「バランス悪いなこれ」 


はっきりいって、私のゲームの腕はジャンルを問わずお粗末だ。 

こだわりと向上心がないせいなのだろう。 

高難度と評判のゲームには初めから手をつけない。 

縛りプレイなどまずやらないし、クリア後のお楽しみにも興味は薄い。 

初回プレイで攻略サイトを見ることもまるで抵抗がない。 

もちろん、今回もそうした。 


4以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/27(火) 00:18:53.39 ID:xGeGXXgU0
グーグルで一件だけ、攻略サイトが出てきた。 

といっても簡素な作りで、管理人の自己紹介と 

大雑把に攻略の流れが書かれているだけ。 


男「うおっ、あるのかよっ!」 

男「世の中広いねぇ~」 

男「こんなマイナーなゲームの攻略サイト作るとか、どんだけ暇人だよ」 


などと失礼なことをいいつつ、しっかり利用する。 

ゲームの進捗速度が少し上がった。 

数日が過ぎた。 


5以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/27(火) 00:19:48.08 ID:xGeGXXgU0
苦戦しつつ、世界を駆け抜けるテレビの中の主人公。 

攻略サイトを信じるならば、 

今ゲームは終盤一歩手前、といったところだろうか── 

そして私は出会ってしまった。 


男「さっきセーブポイントあったし、そろそろボスか?」 

男「お、なんかいる」 

男「───!」 


電流が走った。 


6以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/27(火) 00:20:51.11 ID:xGeGXXgU0
敵がいた。 

1キャラしか通れない狭さの通路に、門番のように陣取っている。 

倒さねば、先に進めない仕組みだろう。 

マップ上のグラフィックは、女だ。 

話しかけると、一言セリフを吐いて戦闘に突入。女の口調だ。 

戦闘グラフィックもやはり女だ。 


男「………」 


私はコントローラーを床に置いた。 


7以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/27(火) 00:22:12.18 ID:xGeGXXgU0
彼女は重要キャラでもなんでもない。 

せいぜい、この先にいる中ボスの前座ポジション。 

戦闘前、一言セリフがあるだけ。 

倒せば無言で、あるいは一言くらい残して消えるだろう。 

それだけのキャラ。 

なのに。 

──なのに。 

私はこの女敵に惚れてしまった! 


11以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/27(火) 00:27:12.62 ID:xGeGXXgU0
男「な、なんだこいつは……」 


心臓が激しくおどる。 

粗いグラフィックで表現された彼女は、私を射抜いた。 

何故だ? 

容姿? 性格? 戦術? 敵キャラというポジション? 

分からない。分かる訳がない。 

気づいたら── 


男「あ」 


防御ばかりしていた主人公は倒されてゲームオーバーになっていた。 


12以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/27(火) 00:29:10.63 ID:xGeGXXgU0
セーブしたところからやり直し。 

もう一度彼女に挑む。 

だが、見ただけで胸を締めつけられる。 

さっきよりも重症だ。 


男「ぐぅっ……」 

男「なんなんだよ、これ」 

男「ぁ……あぁ……」 


所詮は中ボスの前座である。 

普通にプレイすれば、倒せるはず。 

だが、無理だった。 

本日、二度目のゲームオーバー。 


13以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/27(火) 00:38:20.53 ID:xGeGXXgU0
三敗、四敗、五敗。 

いつの間にか深夜になっていた。 


男「はぁ、はぁ、はぁ……。ダメだ、今夜は寝よう」 


しかし眠れない。 

講義やバイトにも身が入らない。 

かといってゲームをやめられない。 

女敵を倒せず連敗しまくる日々。 


男「俺、どうしちまったんだ……」 


14以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/27(火) 00:38:39.33 ID:xGeGXXgU0
またもグーグルに頼る。 

ゲームに出てくる“あの女敵”を調べまくる。 

しかし── 

このゲームを扱っているサイトは数件見つかったが、 

彼女について触れてるサイトは皆無だった。 

当然だ。ただでさえマイナーなゲームな上、その中にさらにマイナーな、 

攻略の壁になるわけでもない敵キャラなど誰が取り上げる? 

製作者ですら忘れているかもしれない。 


男「くそっ、くそっ、くそっ!」 

男「誰でもいい! 誰かと……誰かと!」 

男「この気持ちを共有したい!」 


15以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/27(火) 00:40:09.69 ID:Xw2KMpM/0
わかりすぎて困る 


16以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/27(火) 00:41:36.41 ID:xGeGXXgU0
男「そうだ!」 


私は攻略サイトを思い出した。 

管理人のメールアドレスが載っていたはず。 

そこに、 

『攻略役立ちました。ところで中盤に出てくる女敵、可愛いですよね』 

という旨のメールを送る。 

すると返事は、 

『役に立てて嬉しいです。でも、女敵はチョット覚えてないです。ごめんなさい(笑)』 


男「俺だけか!」 

男「世界で俺一人だけなのか!?」 

男「彼女を愛しているのは!」 


18以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/27(火) 00:52:00.49 ID:xGeGXXgU0
マイナーキャラを扱うサイトや掲示板に、書き込んでみるが、レスはつかなかった。 

ネット広しといえど、彼女を愛しているのは本当に私一人だけらしい。 

私は同類項を探すのを諦めた。 

ならば、元の平凡ゲームプレイヤーに戻るために、彼女を克服しなくては。 


男(全てはこいつを倒せば解決する……!) 

男(全クリまでの流れも丸暗記しちゃったし) 

男「倒して、一気にクリアして、ゲームを処分する!」 

男「それで終いだ!」 


なのに、倒せない。 

誰かのせいで非暴力主義を貫く主人公は、今日も女敵に倒されるのだった。 


男(これはもはや病気の域だ。ネットゲームがやめられない奴の方がマシなくらいだ) 

男「俺は、もう終わりだ……」 


19以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/27(火) 00:52:22.11 ID:xGeGXXgU0
 「なにがオワリだって?」 

男「………?」 

女敵「いや、なんかオシマイだって言ってたじゃない」 

男「うわっ!?」 

女敵「あ、ごめんなさい。驚かせて」 


振り向いたら、あの女敵がいた。 

ドットでもポリゴンでもCGでもないのに、 

全てがゲーム上の印象そのままだった。 

粗いグラフィックでセリフも一言しかない彼女を、もしゲームから出したら── 

目の前にいる女性は、まさにそれだった。 


24以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/27(火) 01:07:14.60 ID:xGeGXXgU0
男「俺はとうとうノイローゼになったようだ。幻覚症状だ」 

女敵「失礼ね、幻覚なんかじゃないわ」 

男「じゃあ、あんたはいったいなんなんだよ!?」 


言葉とは裏腹に、私の胸は高鳴っていた。 

幻覚でもよかった。 

ノイローゼよ、ありがとう、だ。 


女敵「アタシに興味持ってる奇特な人間は、アナタ?」 

男「奇特……」 

女敵「もしかして違った?」 

男「いやいやいや(大当たりです)」 


25以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/27(火) 01:07:30.19 ID:xGeGXXgU0
男「ところで、あなたは?」 

女敵「今更説明することもないでしょ」 

男「ってことは、やっぱりあのゲームの敵キャラ……」 

女敵「そうよ」 

男「なぜ、俺のところに……」 

女敵「だから、アナタがアタシに興味あるらしいから」 

男「あ、ああ、そうだった」 


会話が一周してしまった。 


26以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/27(火) 01:07:49.55 ID:xGeGXXgU0
男「え、と……これは夢とかじゃないんだよね?」 


頬をつねる。 

痛い。 


女敵「もちろん現実よ」 

男「しかし君はゲームのキャラ……」 

女敵「そうよ」 

男「なぜゲームの外に出てこれたんだ?」 

女敵「う~ん、アタシもよく分からないのよね」 

女敵「あっちで、アタシに強烈な興味を持ったヒトの思念みたいなものを感じて」 

女敵「アタシも会ってみたいなぁ、と思ったら」 

男「ここに来ていた、と?」 

女敵「えぇ」 


27以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/27(火) 01:14:48.00 ID:xGeGXXgU0
男「あっちでも、君は門番をやってるの?」 

女敵「いいえ、あっちの世界を適当にたむろしてるだけ。退屈なものよ」 

男「ドラマ撮影が終わって、あとは視聴者の反応を見るだけの役者、って感じかな……?」 

男「さっきまで君は楽屋にいた、とでも考えればいい?」 

女敵「えぇ。といっても、演技じゃなくて本気だけどね」 

女敵「アナタの操作キャラ(主人公)側のキャラは大嫌いよ」 

男「ふうん」 

男(強烈な思念を感じたからって、ゲームキャラが現実に来るなんてありえるのか?) 

男(これがアリなら、こういう事件がそこら中で起きてるはずだ) 

男(………) 

男(ゲームキャラが現実に来られる条件は、自分を強烈に愛している人間が一人の時のみ、とか?) 

男(──だとすれば、まだ分かる気がする) 

男(いやもうどうだっていい! とにかく彼女は俺の為に来てくれたんだ!) 


28以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/27(火) 01:15:06.13 ID:xGeGXXgU0
男「なにか飲み物でも入れるよ」 

女敵「あ、おかまいなく」 

男「──ところで、君はゲームでは敵役、世界を脅かす側だったわけだけど」 

男「こっちの世界をどうこうするって気はないんだよね?」 

女敵「まったくないわ」 

男(ほっ……) 

女敵「アナタがいるしね」 

男「えっ」 

女敵「あら噂をすれば、ちょうどあのゲームやってたとこだったのね」 


ゲームオーバー画面から放置していたので、タイトル画面になっていた。 


男「え、あ、ああ……」 


29以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/27(火) 01:18:36.47 ID:xGeGXXgU0
女敵「ちょっとやってみせてよ」 

男「ああ……」 

女敵「アタシに興味持ったってことは、アタシはもう越えたはずよね」 

女敵「──ってことは、ラスト寸前くらい?」 

男(越せてないんだな、これが……) 


セーブポイントから再開。 


男「………」 

女敵「あら?」 

男「………」 

女敵「ここって、アタシがいるエリアじゃない?」 


30以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/27(火) 01:18:52.74 ID:xGeGXXgU0
男「そうだよ、これは君と戦う直前のセーブデータだ」 

女敵「あら、そうだったの」 

女敵「あ、もしかしてアタシに苦戦して興味を持ったとかそういうパターン?」 

女敵「苦戦するほどアタシ強かったかしら」 

男「……違う」 

女敵「どういうこと?」 

男「プレイすれば分かる」 


ゲーム内の女敵に話しかけ、戦闘開始。 

実物(?)に出会えたせいか、いつもより緊張は薄れた。 

だが── 


33以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/27(火) 01:31:12.60 ID:xGeGXXgU0
女敵「ん?」 

女敵「え?」 

女敵「なんで攻撃しないの?」 

女敵「あーあ……やられちゃった」 


やはり攻撃できなかった。 

苦戦、ですらない、不戦。 


女敵「さっさとアタシなんか倒しちゃえばいいのに」 

女敵「あ! もしかして、攻撃コマンドを使わない縛りプレイとか?」 


そんなことするはずがない。 

私は、使えば楽になるバグ技を知ったら、ちゅうちょなく使うタイプだ。 


男「違うんだ」 

女敵「?」 

男「俺には君を攻撃できない」 


35以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/27(火) 01:32:57.01 ID:xGeGXXgU0
男「だから、このゲームを一生クリアできないんだ……」 

女敵「………?」 

男(引かれただろうな、我ながら気持ち悪いもん) 

女敵「……怖いのね?」 

男(君を傷つけるのがな) 

女敵「じゃあ特訓しないと」 

男「えっ」 

女敵「まずは腕相撲からね」 

男「いや、え、あの(なんかちがう)」 


36以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/27(火) 01:34:42.16 ID:xGeGXXgU0
腕相撲開始。 


男「ふっ、くっ、ぐぅ~!(全っ然、動かねぇ!)」 

女敵「加減しなくていいって」 

男「ぬぅ~!(この細腕のどこにこんな力が!?)」 

女敵「全然力を入れてないでしょ、まだアタシが怖いの?」 

男「ふんぬぅ~!(両手でも全然動かん! ……くおっ)」 

女敵「じゃあ、こっちから」 


ボキッ 


男「あっ」 

女敵「あっ」 


私の右腕が折れた。 


40以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/27(火) 01:41:41.19 ID:xGeGXXgU0
当然の結果だった。 

初期状態で一般人より遥かに強いという設定の主人公が、冒険してさらに強くなって 

ストーリー終盤近くで出会う敵が彼女なのだ。 

一介の学生である私が腕っぷしで勝てるはずがない。 


女敵「ご、ごめんなさい!」 

男「へ……平気平気……(とかいって涙止まらないし、俺ダセェ~! いてェ~!)」 

男「(骨折とか、小学生の時以来だ)とりあえず病院──」 

女敵『回復呪文』 

男「あれ、一瞬で痛みが消えた……腕が治ってる」 

女敵「ふぅ」 

男(そ、そういえば) 


彼女は魔法と直接攻撃を駆使する敵キャラだった。 


41以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/27(火) 01:43:21.07 ID:xGeGXXgU0
女敵「じゃあ今度は指相撲で」 

男「いやいやいや、そういうことじゃないんだ」 

女敵「え?」 

男「ゲームの敵が俺より強そうで怖いから戦えない、ってわけじゃないんだ」 

女敵「そうなの?」 

男「ああ。もしそうなら、俺は最初のボスすら倒せていない」 

女敵「ふうん。じゃあアタシを倒せなかったのは、なんで?」 

男「……傷つけたくないから」 

女敵「へぇ~優しいのね。今時珍しいんじゃない?」 

男(どうもおかしな捉え方をされたっぽいな……) 


46以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/27(火) 02:01:45.95 ID:xGeGXXgU0
女敵「でも、たかがゲームよ?」 

女敵「登場キャラである身としてもクリアはして欲しいしね」 

男「分かった、もう一度やってみるよ」 


ダメだった。 


男「ゴメン……」 

女敵「やだ、謝らないでよ。気にしてないから」 

男「俺は君の期待に応えてやれない……」 

女敵(まずい、どんどんネガティブになってる。なんとかしてやらないと) 

女敵「──そうだ、いいこと思いついた!」 

男「なに?」 

女敵「アタシを倒すとこだけ、アタシがやるのよ」 

女敵「アナタのやってるのを見ていて操作は覚えたから、まず大丈夫よ」 


47以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/27(火) 02:03:23.31 ID:xGeGXXgU0
女敵「いいアイディアでしょ? 我ながら」 

男「………」 

男「ダメだ」 

女敵「えっ、どうして?」 

男「男としての──」 


はるばる遠いところからやってきた、心が崩れかけるほどに惚れた女に 

自分の前に立ちはだかる壁を代わりに壊してもらう。 

断じてあってはならない。 

たとえゲームであろうとも。 

これは男としての── 


男「プライド」 

女敵「は、はぁ……(妙なところで頑固なタイプね)」 


48以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/27(火) 02:03:45.15 ID:xGeGXXgU0
男(なにがプライドだよ……。アイディア考えてもらってる時点でアウトだろ……) 

男「というわけで、君がプレイするってのは却下な」 

女敵「分かったわ」 

女敵「……でも、どうするの?」 

男「(当然の疑問だよな)あ、ああ……えーと……」 

男「スルーするってのはどうかな?」 

女敵「スルー?」 

男「君と戦わずに済ませるのさ」 

女敵「できるの?」 

男「やってみる」 


50以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/27(火) 02:14:09.69 ID:xGeGXXgU0
ゲームでは、たまにボスと戦わずに先へ進める裏ワザがある。 

意図的な場合もあれば、バグの場合もある。 

だが── 


女敵「ないわね」 

男「ないな~」 

男(改造とかすれば可能かもしれないけど、全くそっちの知識はないしな……) 


51以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/27(火) 02:14:23.74 ID:xGeGXXgU0
女敵「やっぱりアタシとの戦いは避けられない運命なのね」 

男「残酷だねぇ、運命ってのは」 

男(いや、待てよ) 

男「これさ、和解ってできないかな?」 

女敵「和解?」 

男「主人公とゲームの中の君を、和解させるんだよ」 


52以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/27(火) 02:14:50.77 ID:xGeGXXgU0
男(ってできるわけねーだろ! 和解ルートなんてプログラムされてるわけがない) 

女敵「無理ね」 

男(即答かい) 

女敵「和解なんて絶対不可能よ」 

男「──? お、おいどうした」 

女敵「アナタだからこうやって話しているの。そう、アナタだから」 

女敵「もし、アナタがあのゲームの主人公だったら──」 

女敵「すぐさま攻撃しているわ。なにをいわれようと、ね」 


彼女の敵キャラとしての一面を垣間見た気分だった。 

私に対しては治療してくれたり助言してくれたりと優しいが、 

彼女は敵キャラなのだ。 

ゲーム内の女敵も、今目の前にいる女敵も。 


54以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/27(火) 02:19:10.87 ID:xGeGXXgU0
男「なんか悪かったな……和解とかいって」 

男「君にとっちゃ宿敵だもんな、まさに。軽率だった」 

女敵「えっ? あ、え? 気にしないで、アタシもどうかしてたわ」 

男「いや、俺が悪かった」 

男「俺には主人公を操る者として、君を倒す責務がある」 

女敵「お」 

男「やるよ。このままじゃ、ゲーム内の君はいつまでたっても敵になれない」 

男「やってやる!」 

女敵(なんだかよく分からないけど……) 

女敵(ちょっとだけ……かっこいい、かも) 


58以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/27(火) 02:27:28.02 ID:xGeGXXgU0
私は再びコントローラーを手に持った。 

世界で一番愛している女を倒すため。 


男「……倒すよ、いいんだな」 

女敵「もちろん。ゲームのアタシも倒されることで、役割をまっとうしたいはずよ」 

男「もう一度セーブポイントからだ」 


一分後、主人公は女敵のいるエリアに到達した。 

話しかける。 

バトル開始! 


60以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/27(火) 02:39:25.81 ID:xGeGXXgU0
しかし、やはり指が止まってしまう。 


男(『攻撃』すればいいのに、できない!) 

女敵「………」 


すると、後ろで眺めていた女敵が私の背中にのしかかってきた。 

二人羽織りのような体勢になる。 


男「お、おい」 

女敵「アタシがついてるわ」 

男(や、柔らかい……あったかい) 

男(心強い……!) 


61以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/27(火) 02:40:04.65 ID:xGeGXXgU0
女敵「伝わる? アタシの感触、アタシの熱、アタシの息……」 

女敵「アタシはここでじっとしてるから──」 

女敵「大丈夫だから──」 

女敵「アナタは戦いに集中して!」 


私のコントローラを持つ手に、勇気が宿った。 


男「ありがとう」 

女敵(ようやくアタシへの恐怖心を払拭できたようね) 


65以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/27(火) 02:46:42.11 ID:IlOSRnJ+0
ただゲームやってるだけなのに無駄にシリアス 


66以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/27(火) 02:52:05.92 ID:xGeGXXgU0
男「ところで……ゲーム内の君を攻撃しても、君に危害が加わるようなことはないんだね?」 

女敵「もちろんよ」 

女敵「もしそうだったら、とっくの昔にアタシは死んでるはず」 

男(たしかに……。かなり古いゲームだし、少なくとも攻略サイトの奴はクリアしている) 

男(ゲーム内の彼女を倒しても、後ろにいる彼女は無事なはず) 

男「分かった、やろう」 


これまで非攻を貫いてきた主人公が、ついに女敵に一撃を入れた。 

男(や、やった……!) 

女敵「……ぅあっ……!」 

男「!」 


67以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/27(火) 02:52:47.60 ID:xGeGXXgU0
男「ほ、ほら! やっぱりダメージが!」 

女敵「いや大丈夫……やっと一撃入れてくれたから嬉しかっただけ。続けて」 

男「分かった……」 


2ターン目。 

主人公の剣が唸る。 


男(お、クリティカル) 

女敵「あっ……ふっ、くっ……!」 

男「やっぱり大丈夫じゃないだろ! すぐリセットするよ!」 

女敵「ち、違うの……」 

男「ち、違うって、すごい痛がってるじゃんか」 

女敵「気持ち……よかったの……」 


69以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/27(火) 02:57:45.08 ID:xGeGXXgU0
男「気持ちよかった……?」 

女敵「ゲーム内のアタシが攻撃を受けた後、電気みたいな快感が体を走って……」 

男(どういうことだ) 

男「危険はないんだな? 体は平気なんだな?」 

女敵「えぇ、ダメージとかではないわ」 

男(嘘に決まってる。なんて優しいんだ) 


3ターン目。さらに一撃を入れる。主人公のダメージはさほどではない。 


男(やっぱりあまり強くないな、いけそうだ) 

女敵「………っ!」 

男(俺が心配するから声殺してるのか。無理しなくていいのに……) 


70以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/27(火) 02:59:26.25 ID:xGeGXXgU0
女敵が回復魔法で自分を回復する。 


男(そういや回復できるんだったな。ゲームオーバーにはならないだろうが、長引くかも) 

女敵「はぁ……はっ……はぁ……」 

男(長引かせて、彼女を苦しめたくない。よし、回復せず攻撃に専念だ!) 


男「よし、またクリティカル出た!」 

女敵(……ぁっ……っ!) 

男「もういっちょ!」 

女敵(……ひぁっ……) 


6ターン目。ついに来るべき時は訪れた。 

主人公のトドメの一撃が決まった。 

女敵は断末魔もなく、通路上から姿を消した。 


72以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/27(火) 03:00:00.81 ID:xGeGXXgU0
男「や、やった……!」 

男「ついに君を倒し──」 


私の背中にいたはずの彼女はいなくなっていた。 


男「……だよな」 

男「そんな気がしてたよ」 


悲しかった。 

しかしここで立ち止まっては、私の“一歩”を手伝ってくれた彼女の努力が無駄になる。 

立ち止まってはならない。 


73以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/27(火) 03:05:42.35 ID:xGeGXXgU0
男「もう日が変わってたか……」 

男「明日は予定ないし、クリアしてやる」 


私はかつてない集中力で、女敵打倒後のゲームをプレイした。 

消化試合などではない。 

彼女に報いるためにも、全力でプレイする。 


男「全クリしてこそ──」 

男「彼女の想いは成就する」 


74以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/27(火) 03:06:05.03 ID:xGeGXXgU0
ゲームは終盤へ突入。 

世に全く評価されていないマイナーRPGだけあって、 

素人目にもハチャメチャでベタベタな展開が続くが 

私は黙々と集中してプレイする。 

これが彼女がいる世界なのだから。 


男「ついにラスボスか……」 


ラスボスは強かった。 

バランス調整を疑いたくなるくらいに強かった。 

先の攻略サイトでも「強すぎ」と評されてただけのことはある。 

だがレベルを上げ、装備を整え、ついに倒した。 


75以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/27(火) 03:08:02.33 ID:xGeGXXgU0
エンディングが始まった。 

世界に平和が戻り、スタッフロールが流れ、終了。 

プレイ中散々に酷評した身でいうのはなんだが、やはり感慨深いものがあった。 

当たり前だが、女敵はエンディングに出てくることはなかった。 

このゲーム内の彼女は、途中で倒される障害の一つにすぎなかった。 


エンディングを迎えた時、窓の外は朝になっていた。 


男(彼女を倒さなきゃ、俺はずっと彼女と一緒にいられたのかな……) 

男(一緒にいたかった) 

男(たとえ彼女がそれを望まなくても) 


76以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/27(火) 03:08:45.36 ID:xGeGXXgU0
男(全クリしたら、このゲーム処分しようかと思ってたけど) 

男(持っておこう) 

男(持っていれば彼女とまた会える……そんな気がする) 


集中していた脳が、一気に眠気をもよおす。 


男(徹夜でゲームなんて久々だったな……少し寝るか) 


万年床を涙で濡らしつつ、私は眠りについた。 


78以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/27(火) 03:14:01.60 ID:xGeGXXgU0
夕方頃、目が覚めた。 

男「さすがに寝すぎたな……よく考えたら久々に熟睡できたし」 

男(これも彼女のおかげだな……) 

男「ふぁ……あっという間の休日だったな」 

男「でもこれで、あの奇妙な生活ももう終わりか」 


81以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/27(火) 03:14:39.73 ID:xGeGXXgU0
 「なにがオワリだって?」 

男「え」 


振り向いたら、彼女がいた。 


男「き、消えたんじゃ……」 

女敵「あんまり気持ちがよかったから、変な声出る! と思って一度帰っちゃったの」 

女敵「あんな風になったの初めてで、動揺して」 

女敵「何度か戻ってきたけど、真剣にゲームやってたり、熟睡してたから」 

女敵「なかなか話しかけられなかったの、ごめんなさい」 

男「いやいやいや、全然気にしない」 


82以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/12/27(火) 03:14:57.06 ID:xGeGXXgU0
男「だって俺、君が好きだから」 


私は今、とても幸せだ。 


<完> 
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コメント

No title

こーゆーの地味に好きw

No title

なんか同じような妄想したことあって親近感わいちゃうんですよ~

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